外国語で日本の漫画を読む話

 日本の漫画は世界中の言語に翻訳されていますが、日本に住んで日本語を母国語としている以上、なかなか日本の漫画が海外でどう読まれているのかを知る機会はありません。

 私も日本で暮らし、日本語を話す日本人です。しかし、ある程度英語と韓国語を勉強したおかげか、簡単になら文章を読むことができます。実際大学の実験テキストなどはほとんど英語ですしね。

 そこで今回は外国語で日本の漫画を読むとどんな感じな感じになるのかを軽くお話しようと思います。ちなみに、私が理解できるのは英語と韓国語。ペラペラ話せるわけではありませんがそれなりに理解することができます。

外国語で日本の漫画を読むということ
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(左から韓国語版、繁体中国語版、日本語版)

 あくまでも私の感想ですが、外国語に訳されている日本の漫画というのは現地独特の言い回しやほのかな改変があって面白いなと。むしろ日本語と外国の違いを見るために訳本を読んでいるという感じです。

 僕が良く読んでいる韓国語訳の漫画では日本語では敬語になっているところが韓国語ではため口になっていたり、「~さん」というべきところが呼び捨てになっていたりと、少し変な漫画を読んでいる気分になります。
 ほとんどが韓国の方向けに行われた配慮なのですが、時折「これ韓国人にも違和感ありありだろ…」という箇所は見かけます。やはり言語の限界というものでしょうかね。

 でも、この面白い漫画を韓国の人にも伝えるんだ!という気概も見えてきて、やっぱりクールジャパンとして翻訳をされている方には敬意を感じます。

外国語への訳され方は主に2タイプ
 何度か韓国語に訳された日本の漫画やアニメを見たことがありますが、日本の原作から外国語への翻訳の仕方は以下の2タイプに集約されます。

・原作の設定を改変し、舞台を現地化するローカライズタイプ
・原作の日本語の文章をできる限り忠実に訳した直訳タイプ

 揺れ幅こそありますが、ある国から別の国に漫画が輸入されるときは上のどちらかのパターンで翻訳されます。

ローカライズタイプ
 設定をまるごと変えて舞台を本が出版される国に変えてしまうローカライズタイプについて。「設定を現地にする?無理があるだろ」と思われるかもしれませんが。これはどの国でも行われており、現地の人に馴染みのない日本文化などはカットされたり、修正されたりしています。反対にその国の事情に合わせた改変も多いです。

 米国版アニメドラえもんなども本名は日本名のままですが、ジャイアンが「Big G」と呼ばれたり、お金が円ではなくドルになっていたりとところどころアメリカに合わせた仕様になっているそうです。
 反対に韓国のweb漫画が日本に輸入された場合、登場人物の名前を韓国名から日本名にして舞台も日本にしているものもよく見かけます。

 メリットとしては、日本文化に詳しくなくてもすんなりと話に入っていけること。特に現地の人に合った文化や価値観に改変できるので、違和感なく読み進めることができます。

 デメリットはコマの都合上大きく改変できない箇所もあり、外国の漫画やアニメだと知らずに読むと「…?」となります。ある漫画(韓国→日本)の話ですが、”検察官”がパトカーでやって来て犯人を現行犯逮捕するという光景は飲み込むのに時間がかかりました。いや、そこは警察官だろと。どうやら韓国では検察官も犯人を逮捕することがあるみたいです(一応日本の検察官にも逮捕権はあります。ただ虐待の現行犯逮捕に検察官はやはり微妙)。

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(韓国語版ドラえもん第12巻より。コエカタマリンで出した「윽」の声でボールを取ってあげるのび太。無理があるだろ…)

 他にも無理やり現地の言葉や風習に合わせた結果、不自然な描写になってしまうこともあります。
 また、日本の漫画を日本の仕様のまま読みたいという外国人マニアにはことごとく不評です…。

 なお、このタイプはドラえもんやクレヨンしんちゃんなど、大御所もしくは2000年代以前の漫画が多いです。しかし「クールジャパン」が取りざたされるようになると、「日本の漫画をできる限りそのまま読みたい」という声が多くなったのか、 日本語の文章をそのまま外国語に訳した直訳タイプの漫画が多くなります。

直訳タイプ
 日本語のニュアンスをできる限り残した翻訳版。諸外国でも現地ローカライズされたものより人気があるらしく、あるマレーシア人の留学生曰く「できる限り日本の原作に忠実なものが読みたいのでそっちの方がありがたい」とのことだそうです。
 やはり日本文化が世界中に理解されるようになると、日本のことをもっと知りたいという願望が生まれるそうで、表現も日本語のニュアンスを残したものの方が喜ばれます。

 メリットとしては、やはり日本の文化をそのまま味わえること。日本に憧れのある外国人にとってはたまらないでしょう。

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(韓国語版あずまんが大王第1巻より)

 デメリットとしては、いちいち日本独自の文化に注を付けなければならないこと。例えば「日本は4月入学」など。外国では9月に学校に入学する国も多いですからね。
 またダジャレやなぞなぞ等の言葉遊びは日本でしか通用せず、外国語版ではかなり苦心して訳されているのはよく見かけます。なので、うまいダジャレの訳を見るととても感心するというか、翻訳者の苦労を労いたくなります。

 というわけで今回は海外における日本漫画の外国語訳についてでした。次回はあずまんが大王と日常の韓国語訳について取り上げようと思います。

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