漫画・少女終末旅行の感想

 つくみず作、漫画・少女の終末旅行の感想です。


少女終末旅行 1 (BUNCH COMICS)

あらすじ
 人類や動植物がほぼ絶滅した世界。そんな世界の上を二人の少女・チトとユーリが旅していた。随所にある人類の痕跡に思いを馳せながらも、二人は眠りゆく世界をふたりぼっちで旅していく…。

感想
 「絶望」と言うものをこんなに美しく表現した漫画は他にないでしょう。

 チトとユーリは食料と移動用車両(ケッテンクラート)の燃料を探し求めて未来の要塞都市を旅していくのですが、そこに人類はおらず、かろうじて2人の人間を見つけることは出来ますが、あるきっかけで彼らも途中で死亡したことが判明します。
 他にも人類が残した高高度文明の機械類はほぼその機能を停止し、ただのガラクタに。数々の凄まじい機械の森の中を二人は皮肉にも第二次世界大戦中のドイツ軍の軍用車・ケッテンクラートで駆けていきます。

 一度人類が科学技術の頂点を謳歌しその後墜落、終わらない戦争に明け暮れ自らを滅ぼした世界。そんな中でも二人は食料を見つけたくましく生きていきますが、彼女たちも最後は追い込まれていきます。
 この追い込まれる過程についてはネタバレになってしまうので詳しくはお話できません。ですが、世界観が明らかになり、チトとユーリがいる世界がどのようなものなのかが明らかになると、少しずつ世界が終焉を迎えていく様を見るようになり、最終的にはその終焉が二人の元に迫っていく。
 この過程の描き方がものすごく上手に感じました。しかも読んでいて嫌な感じがしない。もし自分が二人のどちらかだったとしても全てを受けいれ幸せに、いや「絶望」も幸せに感じながら死んでいくんだろうな。もし自分が死んで何もない空間に行き、何も見えず、何も聞こえず、何も感じず、何も考えないような「無」の存在になったとしても「これはこれでありなんじゃないかな」と思わせるような優しい世界を表現してくれました。
 そのくらい終末論について一つの極値を与えてくれた作品だと思っています。

 また主人公のチトとユーリがカワイイんですよね、また。健気に必死に生きようとするチトと楽観的で向こう見ずなユーリ。対称的だけどもどこかお互いを補い合っている。そんなベストコンビを人類のフィナーレに持ってきた。
 意外にもユーリの方が死に対する恐怖心がないんですよね。反対に頭の良いチトの方が死に対する恐怖心を剥き出しにしているというか。案外世界が終わるときには人類はチトタイプとユーリタイプの二種類に分かれるのかもしれません。
 そう思うと二人は人類の擬人化なのかなと思います。

 と言うわけで今回はつくみず作「少女終末旅行」の感想でした。

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