韓国語版あずまんが大王研究〜アニメ版〜

 前回の記事で韓国語版のあずまんが大王の話をしましたが、そこでアニメ版は漫画版と違い、韓国に合わせてローカライズされているというお話をしました。というわけで今回はあずまんが大王”アニメ版”の韓国国内での展開のお話です。


 一応先にお話しさせていただくと、ギャグの内容などはほとんど元の日本語版と一緒です。というより、登場人物や舞台設定が韓国になっていること以外あまり改変はないです。
 むしろローカライズされている部分が非常に興味深いです。

 普段何気なく見ていたキャラクターが韓国人になると雰囲気がどのように変化するのか、ちょっと興味はありませんか?

舞台設定
 初めに言ったように舞台は韓国ですが、具体的にどの都市かまでは決められていないようです。一応、ソウル及びその近郊であると思われます。そもそも日本でも特定はされてませんし、東京かその周辺かみたいな感じで描かれているだけなのではっきりと決められているものではないと思います。
 
 舞台が韓国になったことで設定も日本色のものは削除もしくは改変され韓国に合わせたものに変更されています。もっとも削除されたのは着物のシーンくらいで日本だからと言って大幅に変更されたシーンはありません。

 一方、あずまんが大王のキャラが修学旅行で行った旅行先は沖縄なのですが、韓国語版では韓国から日本へ修学旅行に行ったということにされています。もちろん旅行先は沖縄。なかなか通ですね。
 漫画版では沖縄方言をネタにしたギャグが展開されていたのですが、アニメ版では日本語の標準語をネタにしたギャグが展開されるなど、「沖縄に旅行した」というよりも「日本に旅行した」という雰囲気になっているのがとても特徴的でした。

各キャラクターの韓国人名
 先に言ったようにアニメ版ではキャラの名前が韓国人名に変えられているのが特徴的。しかも、そのキャラの特徴をとらえた名前に変えられているのです。

美浜ちよ→ユン・ナラ

 あずまんが大王のキャラクターの中でも一番の若さと知能を持つちよちゃん。そんなちよちゃんは韓国では「ナラ」と呼ばれています。

 ここで「ナラ」の意味は「国」「飛ぶ」「飛べ」であり、これから国を引っ張って行くであろう力強さと、おさげで飛ぶ(大阪の夢の中で)というネタが見事に詰まったダブルミーニングな名前です。

春日歩(大阪)→メン・スンジョン(プサン夫人)
 大阪の愛称で親しまれている歩は本名を「メン・スンジョン」、あだ名を「プサンテク(釜山夫人)」に変更されています。そのあだ名から分かる通り大阪は釜山から引っ越してきたという設定になっています。訛りも釜山方言であり、まさに的を得た変更と言えるでしょう。
 ちなみに「テク」は「夫人」の意味ですが、どちらかというと語調を整える意味で付けたというニュアンスが強く、なにか「夫人」的な意味に絡めて「プサンテク」と呼んでいるわけではなさそうです。ちよちゃんも「プサンオンニ(釜山お姉さん)」と呼んでいます。
 ちなみに「スンジョン」とは日本語で「純正、純情」の意味。確かに大阪はボケてますが、彼女らしい優しさにあふれた名前になっています。別な意味の「純正」かもしれませんが…。

滝野智→ヤン・ソラン
 あずまんが大王一のトラブルメーカー、滝野智。そんな彼女の韓国人名は「ソラン」ですが、意味は「騒乱」または「人騒がせ」。もう、ともちゃんの性格をそのまま字面にしたような名前です。親ももうちょっと考えなかったのかとすら思ってしまいます。

水原暦→パク・ジェギョン
 よみこと水原暦の韓国人名「ジェギョン」ですが、おそらく何等かの意味を持っている名前ではないと思います。ほかのキャラクターに比べて堅苦しさはありますが普通の名前であることはほぼ間違いないでしょう。

榊→イ・テヒ
 名前が最後まで明かされなかった榊さんですが、韓国ではちゃんと姓名両方与えられています。というより、韓国では姓よりも名の方が重要なので、当然の措置でしょう。
 さて、この「テヒ」という名前ですが、こちらもよみと同じく意味はないみたいです。ただし「ヒ」には「姫」の漢字が当たると思われるので、登場人物の中ではとりわけ女性らしい名前であるといえるでしょう。

神楽→ナ・スンニ
 こちらも日本では下の名前が明かされなかった神楽ですが、韓国ではきちんと「ナ・スンニ」という名前が絶えられています。
 「スンニ」は韓国語で「勝利」を意味する単語であり、運動の分野で常に勝負する彼女にとってまさに的確な名前でしょう。

かおり→プ・ジュヨン
 今回紹介する名前の中で一番ひどいと思ったのがこのかおりん。何せこの「ジュヨン」、意味は「周辺」です。さすがにサブキャラなのは分かりますが、露骨すぎるそのネーミングに泣きました。
 頑張れかおりん…。

谷崎ゆかり→チョ・ジナ
 ゆかりはちよちゃんたちのクラスの担任であり、英語教師。そんな彼女の名前は「ジナ」。普通です。めっちゃ普通です。

黒沢になも(にゃも)→チュ・セミ(ス・セミ)
 高校の生徒たちから慕われているという設定のにゃもこと黒沢先生。韓国では「セミ」の名前を当てられていますが、おそらくこれは「セミハダ」という「細くて美しい」の意味を持った単語から来ていると思われます。
 その通り、黒沢先生は美人で体格の良いキャラとして描かれており、まさに名付けた通りに育った女性ともいえるでしょう。
 ちなみに、ゆかりことチョ・ジナからのあだ名はス・セミ。「チュ・セミ」のちょっと砕けたような言い方です。言っておくと、韓国では友人でもフルネームで呼ぶことがあります。なので、ゆかりもにゃものことを「ス・セミ、ス・セミ~」と呼び出しています。

千尋→キム・ヘウン
 かおりんの親友として描かれているサブキャラの千尋。「え、誰?」と思う人もいると思いますが、一応Wikipediaにも載っているサブキャラクターで
す。
 韓国人名は「キム・ヘウン」。苗字も名前も平凡です。

忠吉さん→チャングニ
 ちよちゃんの忠犬の忠吉さん。「将軍」を意味する「チャングン」から名前が取られています。忠吉さんにぴったりの勇ましい名前ですね。

木村→ピョン・テシク
 どうして高校の先生になったのかと聞かれ「女子高生が好きだから」と即答した国語教師の木村。韓国語版でもその変態っぷりは健在ですが、そんな彼の韓国人名は「テシク」。おそらく「太息」の漢字が当てはまると思うのですが、どうも雑念を取り払って行う「太息法」という道家の呼吸法から来ているみたいです。
 なんだか悪意を感じる命名の仕方ですね。雑念ばっかじゃん。

実はED曲が違う
 以上、キャラクター達の韓国での呼び名についてお話してきましたが、実は韓国語版あずまんが大王にとって大きな変更点がもう一つあるのです。


 それはED曲。日本語版でのED曲はOranges & Lemonsの「Raspberry Heaven」という曲ですが、韓国語版では「少女のロマン(原題)」という全く別の歌に差し替えられています。
 元の落ち着いた「Raspberry Heaven」とは違って元気な曲調となっているのが特徴。日本とは全く違う締め方をするんですね。

 なお、OP曲は日本と同じOranges & Lemonsの「空耳ケーキ」の韓国語ver.。韓国でカラオケに行ったとき「空耳ケーキ」を歌いましたが、1番しか収録されていませんでした。どうも1番しか訳されていないようですね。
 ちょっと残念です。

 というわけで今回は韓国語版あずまんが大王のアニメ版についてお話しました。実際に見てみると日本のオリジナルと全く違うアニメを見ているようで楽しいですよ~。
 そんな、一味変わったあずまんが大王の世界でした。

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