韓国語版日常研究 in web (2) はかせの呼び名のお話

    ぼちぼち懲りずに韓国語版日常研究第二弾です。
 しかしこのシリーズいつまで続くのかな。終わり方が分からないです。というより話のタネが見つかったら書いていくスタイルですかね。

 というわけで今回は韓国語版日常におけるはかせの名称についてのお話です。

「はかせ」は役職名
 はかせは7歳にして凡庸型AIロボ「東雲なの」を生み出した少女です。しかし、才媛にも関わらず性格は自由気ままそのもの。自分のやりたいように生きる少女です。

 そんなはかせの名前は苗字が「東雲」であるとだけ明かされただけで作品の最後まで明かされませんでした。ワンチャン「はかせ」が下の名前かもしれませんが、結局のところ分かりません。おそらく「はかせ」はあだ名でしょう。

 では、韓国語版ではどのように「はかせ」の名前は表記されているのか。

IMG_6046
(韓国語版日常第3巻p152より)

 なのでおそらく「はかせ」というのは韓国では役職名という解釈で翻訳がされているものと思われます。私も韓国語版日常を読んでいるときは「パクサ(博士)」は役職名という感覚で読んでいました。
 より細かく言えば「『はかせ』というのは役職の『博士』から転じたあだ名であり、本名は別で存在する」という感覚になります。

 基本的には「パクサ、パクサ」と周りから言われています。はかせ自身も自分のことを「パクサ」と呼んでおり、愛称としてかなり定着している呼び方みたいです。

「博士様」から見るはかせとなのの上下関係
 ただし、なのからは「パクサニム(博士様)」とまた違った呼ばれ方をされています。
 「え、様?」と思われるかもしれませんが、韓国では身上の人間を役職名で呼ぶときには必ず「様」に当たる「ニム」を付ける必要があります。例を挙げると「ソンセンニム(先生様)」、「サジャンニム(社長様)」。「パクサニム(博士様)」もこれに当たります。

 実をいうとこの「パクサニム」、はかせとなのの関係性を見るうえで相当重要なポイントになっています。というのも韓国の敬語は日本よりも厳格にかつ単純に運用されているので、敬語やため口を誰に使うかで一発でその人たちの人間関係が分かるわけです。

 前回の記事でお話しましたが、韓国語版日常ではなのは「相手を呼び捨てにしながら」敬語を使っているという不思議な翻訳のし方をされています。しかし、はかせに対してだけはきちんと整えられた敬語を使っているのです。先生のような身上の人と話すような敬語を使っています。
 要はなのにとってはかせは絶対的に上の立場に来る存在なわけです。日本語版では「ロボットとはかせの仲良し家族」みたいなイメージでしたが、韓国語版では「ロボットの召使いと製作者の博士」というイメージになります。日本語版よりも「博士と召使い」の上下関係がより鮮明に浮かび上がるように描かれているのです。

IMG_6047
(韓国語版日常第4巻p120より)

 例えば上の「はかせ、阪本さん、ただいまー」の台詞は「博士様、阪本、ただいまー」と逆翻訳でき、名称だけでみると阪本さんの立場がはかせより下に来てしまっています。こうして見るとなのと阪本さんの関係が日本のものより「友達」に近づいているという印象を受けるので、これはこれで興味深いです。

 なお、はかせとなのの家族的な関係はちゃんとお話を読めばちゃんと読み取れるようになっているので、韓国語版だからといって特別厳しい上下関係が築かれているわけではありません。ですが、読んだときの印象はだいぶ異なります。

 韓国語版日常ではかせだけが韓国名を与えられているというのはなかなか不思議な感覚でした。

 というわけで今回は韓国語版の日常におけるはかせの名称についてのお話でした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です