コミケ原稿が無事に終わりホッと一息な石川定治です。
ぼちぼちコミケに向けた準備もしていくのですが、まだ時間もあるのでしばらくはゆっくり好きなことや勉強をするといった感じですね。
で、コミケには既刊として「韓国語版日常研究」を持っていく予定なのですが、今回はこれに絡めて韓国語版の日常(あらゐけいいち先生作)についてお話していこうと思います。この本では書けなかった個人の感想などもここで語らせてもらおうという感じです。
日常は外国語にかなり訳しづらい漫画
前の記事では韓国語版あずまんが大王についての記事を書きましたが、ほぼ忠実に日本語から韓国語に訳されているとお話しました。
それで韓国語版の日常も手に入れたのでそれを読んだのですが、まあ翻訳大変だったろうなと。印象としては、日常はあずまんが大王と比べて段違いに翻訳家としての技量が試される漫画だと思います。
もっともあずまんが大王を訳すときも相当苦労されたでしょうが、単に「翻訳する」という作業では終わらない難しさが日常にはあります。
日常はあずまんが大王と異なり言葉遊びを多用するギャグが特徴的です。さらに突っ込んでいえば日本人的にも独特な話し方をするキャラクターが見受けられるため、そこの解釈をどうするかも翻訳者さんはかなり悩まれたのだろうと思います。
だからこそ研究のしがいがありましたし、何よりも翻訳者さんが熱意を込めて翻訳されているというのが感じとれました。
違和感ありありな東雲なのの敬語
日常には「東雲なの」という女子高生ロボットが登場するのですが、ロボットらしく相手に敬語を常に使うキャラクターです。
この敬語が彼女のキャラクターを大きく決定付け、なのちゃんらしい可愛さを表現しているのですが、韓国語になると妙な翻訳のされ方をしています。
とりあえず前提知識として韓国語は日本語とほぼ同じ語順を持ち、敬語が存在しているということを理解してください。「~さん」に当たる表現もあります。
なら、なのちゃんはどういう話し方をしているのかというと、「敬語を使いながら相手を呼び捨てにする」話し方をします。いや、マジでこの通りです。
ガチで彼女「長野原、どうしたんですか?」と発言します。
韓国語版日常第4巻p143より。ちゃんみおを「長野原」と呼び捨てにするなの)
そもそも韓国では同級生に敬語を使うというのはほぼないです。日本ではなのちゃんの個性として受け止められる敬語口調も韓国ではまず「敬遠」の意味合いで取られるでしょう。
でもなのちゃんの敬語は彼女の健気さの象徴でもあるのでため口にしてしまうのも惜しいのでしょうね…。その折衷案としての「ため口敬語」なのかなと。
ただ韓国人には違和感がある訳し方みたいですね。韓国人の友人に聞いても「何その韓国語?」って言われました。
新鮮ですよ。阪本さんのことを「阪本」と呼び捨てにするなのちゃん。
「ゆっこ」と呼ばれない祐子
日常の顔であり、その馬鹿さと素直さで多くの人を虜にしてきたゆっここと相生祐子。
別に当たり障りもなく訳されていそうですが、なんと彼女「ゆっこ」ではなく本名の「ユーコ」で周りから呼ばれています。
韓国語版日常第4巻p141より。「ユーコ、ユーコ‼」と叫ぶちゃんみお)
はっきり言って一番ビビったところです。なぜ「ゆっこ」のまま訳さなかった⁉と。
正直に言うと謎です。まあ「ゆっこ」というのが日本人らしいあだ名の付け方だとは思うのですが、韓国人にとって発音しにくい単語じゃないだろうし…。
韓国人はもっとシンプルにあだ名を付けるし、それどころか「親から貰った大切な名前だ」みたいな感じであだ名そのものを嫌う人もいるので、あまり韓国人には合わないあだ名だったのかなとは思います。
ただやっぱり原作を知る日本人の僕からすれば「ゆっこ」そのままで訳して欲しかったなとは思います。普通に日本風のあだ名で通ると思いますし。
読んでると不思議ですね。本名の「祐子」の名前で呼ばれまくっている「ゆっこ」。すんごいシュールです。
無論、韓国の日常ファンは「ユーコ」の名前で「ゆっこ」のことを呼んでおり、相生祐子の愛称は「ユーコ」で統一されています。日韓両言語を理解できる場合は日本語では「ゆっこ」、韓国語では「ユーコ」で使い分けています。私も韓国語で日常関連のツイートをするときは「ユーコ」の表記を使います。
ちゃんみおとゆっこのカップリングタグ「みおっこ」も、韓国では「ミオユコ」または「ユコミオ」と呼ばれているようです。国を超えてカップリングタグがあるのがこれまた素敵。日常って世界で愛されてるんですね。
というわけで、今回は韓国語版日常についてのお話でした。1回では語りつくせないのでこのシリーズについては不定期で連載していく予定です。