週刊少年マガジンで連載中の漫画「This man その顔を見たものには死を」の感想です。原作は花林ソラ。作画は恵広史が担当。
This Man その顔を見た者には死を(1) (週刊少年マガジンコミックス)
あらすじ
被害者の証言から容疑者の顔を絵に描き起こすことが出来る「似顔絵捜査官」の天野斗はある日、奇妙な男を見たと言う明里光代とその娘・星子にその男の似顔絵を描いて欲しいと頼まれた。
その男の顔を描き上げた斗はその男に既視感を抱いた。その男はかつて都市伝説で有名になった「夢に出てくる男」・This manにそっくりだった。
そして似顔絵を描いた日の夜、光代がThis manの顔をした謎の男に惨殺された。
やがて斗はThis manが引き起こす謎の連続殺人に巻き込まれていく…。
感想
This manという都市伝説を基にしたこの作品。
夢に出てくるという、いつか会えそうだけども現実では会えない設定の男を連続殺人鬼として描き、それに主人公たちが翻弄される様を描いた作品です。この漫画では「現実」で自分の顔を見た人間をThis manが次々と殺していきます。
連続殺人起がThis manというちょっと馴染みのある都市伝説上の登場人物だけに、すぐに物語の性質を理解し、漫画の世界に入り込むことが出来ます。
このThis manがこれまた恐ろしい。何せめちゃくちゃ強いし、ぴょんぴょんと飛び跳ねては主人公を殺害寸前まで追い詰め、挙句11人の人間を1時間足らずで殺してしまう様はThis manの特異性を強調しています。
この人外そのものな存在にどう立ち向かっていくのか。頭脳や肉体を最大限に活かして主人公たちはThis manと戦っていきます。
個人的には「それを見たものは必ず死ぬ」という設定をホラーではなくサスペンスとして表現したのはうまいと思いました。シンプルなサイコサスペンスとして描くことで場のドキドキ感を演出し、This manとは何者なのか、そしてThis manを操っている者は誰なのか。ミステリーそして真実に迫っている様は読んでいてすごく面白いです。
あと、絵が非常にうまい。あまり私は絵の良し悪しで漫画を評価するのは避けているのですが、今回は主人公が「似顔絵捜査官」なだけあり、絵のうまさがそっくりそのまま漫画の面白さに反映されていました。これは恵先生だからこそ出来た漫画の描き方だと思います。This manにぴったりの漫画家さんでしょう。
ただ、恵広史先生の作品にしては短めに終わりそうな印象があります。この先生の前2作が結構長い期間連載されていた漫画なので若干その意識で行くと、「あれ?もう真相に迫っちゃったの?」という印象があります。
単純に短めのお話というだけなのでマイナス要素ではないのですが、それまでの恵先生に対して抱いているテンションで読むと拍子抜けしてしまいます。
今現在でも連載中ですが、後1年くらいで終わりそうです。
あと、犯人がThis manである必要はあるのかというのは思いました。別に物語中に「夢」という要素があるわけではないので。「夢に出てくる男」にしては現実でバタバタやっているイメージです。これから大どんでん返しがあるのかもしれませんが。
単純に話題にするためにThis manを犯人にした感じが少々あります。まあ、This manがこのような都市伝説的なサスペンスにはもってこいの存在なのは分かるので、そこは目をつぶりましょう。
それで、この漫画で一番特徴的なのはThis man以上に「動画投稿者」という職業の人間が大きくクローズアップされていること。この物語では「ワンチューバー」という現実では「ユーチューバー」に当たる職業の人間が登場するのですが、彼が後々物語に大きく関わってきます。
この手の登場人物は今までのどの漫画にも小説にもなかったので、動画投稿サイトを通じたサスペンスはすごく新鮮でまさに今注目されるべき漫画だと思います。
今現在の動画投稿者をはじめとするインターネットの闇。サブながらもそこに光を当てたのはすごく良い着眼点であることは間違いないでしょう。
サイコサスペンスが好きな人にはもってこいの作品です。絵柄も綺麗なので一人一人の表情を読み取りながら読み進めるのが楽しいです。
果たして主人公の天野斗はThis manの正体を暴き暴走を止めることができるのか。私も連載終了まで読み切りたいと思います。
というわけで「This man その顔を見た者には死を」の感想でした。